医療法人は、医療サービスの質を向上させ、地域医療における重要な狙い手となるべく、医療法によって特別に設立が認められている法人です。第5次医療法改正では、そうした役割についても条文に明記されましたが、「非営利性」や「公益性」をより徹底させるべく、基金拠出型の医療法人や社会医療法人という新たな法人の区分が新設されました。この改正により、平成19年4月以降に設立される医療法人は、基金拠出型医療法人となりました。医療法人のメリットデメリットは基本的には一般の法人のメリットデメリットと同様ですが、異なる医療法人ならではの要素もあります。
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医療法人成を考える場合、忘れてはならないのが措置法26条の存在です。法人税法上も、措置法26条は通用可能ですが、理事の給与(役員報酬)があるため、概算経費のメリットを享受できません。医療法人成りを考える際、措置法26条によるメリット税額が多い先生については、安易に法人成をしないほうがよいでしょう。
個人事業者の場合、従業員5人までは社会保険の任意加入事業者となります。しかし、法人については無条件に強制加入となりますから、法人成を行うと、社会保険料の負担が増大します。医師・歯科医師の場合、医師国保や歯科医師国保に加入されていることもあります。これらの健保は事業主負担がありませんから法人成する際の社会保険負担も厚生年金のみに限られます。試算する際には留意してください。
医療法人は、小規模企業共済の加入対象業者に該当しません。小規模企業共済制度は大変優れた制度ですので、検討が必要です。ちなみに、個人時代から続けてきた掛金は、金額払戻され、退職所得として課税の対象となります。
医療法人における最大のメリットの1つとも言えるのが、分院の開設です。過疎地でない場合、医師・歯科医師1人につき診療所の管理者にしかなれませんので、個人で事業を行うかぎり、分院の開設はできません。あたり前のことではありますが、株式会社など一般法人は診療行為ができませんので、組織の力で医療を提供していきたいという場合には、医療法人の存在は不可欠となります。
基金制度の最も大きな特徴は持ち分の定めがなく、解散時の残余財産が国等に帰属する点です。これは、大きなデメリットに感じられるかもしれませんが、反面こうした特徴があるため、税法上の出資金評価額は額面金額となり、事業承継に大変有利な制度でもあります。
平成19年4月の改正により現在設立できる医療法人は以下の通りです。
それぞれ特徴があります。
医療法人の種類 | 基金拠出型医療法人 | 社会医療法人 | 特定医療法人 |
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認可・承認 | 都道府県知事の認可 | 都道府県知事の認可 | 国税庁長官の承認 |
出資持分 | なし | なし | なし |
退社時の拠出金 払い戻し |
拠出額を限度 | 国等に帰属 | 国等に帰属 |
相続税課税対象 | 拠出額 | 課税対象外 | 課税対象外 |
業務内容 | 医療・医療付随業務 | 収益事業も可能 | 医療・医療付随業務 |
要件 | 特になし (資産要件・役員要件等のみ) |
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その他の特徴 | 現在、設立される医療法人のほとんどが該当 |
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税率の優遇措置あり |